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取材レポート「香りとえいこと」は、エコロギー四万十と和の香りを取り巻く方々のお話を聞いていくページです。
今回は「土佐文旦」の生産者、「白木果樹園」さんのレポートをお届けします。
文旦はグレープフルーツの原種の植物。その見た目や大きさもグレープフルーツほどで、グレープフルーツはまん丸なのに対して、文旦はすこしぽってりした扁球型。そのルーツは東南アジアにあると言われています。
文旦の中のポピュラーな品種のひとつ「土佐文旦」
産地として名を冠しているわけではなく、土佐文旦はれっきとした品種名。昭和初期ごろ、高知県土佐市の宮ノ内地区で栽培方法が確立された品種です。
土佐文旦の香りの成分の特徴は「ヌートカトン」
ヌートカトンはグレープフルーツやナツミカンなど、文旦からの交雑種にのみ含まれる成分で、他の柑橘類にはありません。
土佐文旦
-Tosa buntan-
学名:
Citrus grandis
Osbeck forma
Tosabuntan
目 次
1.「土佐文旦」発祥の地から
2.地の利と自然の恵みを活かして出来る、良質な土佐文旦。
3.味と香りを整える大事なステップ「追熟」
4.文旦の実りを支える、人の手と小夏のちから。
5.白木さんの飽くなき探究心と、たくさんの文旦のなかまたち。
「土佐文旦」発祥の地から
土佐市は高知県内一の土佐文旦生産地であるとともに、土佐文旦発祥の地でもあります。
その土佐文旦発祥の地が同市宮ノ内地区。そこに白木果樹園さんはあります。
宮ノ内地区の看板。
収穫されたの文旦。
着いてすぐ出荷場に入るなり、目にも鮮やかな黄色い文旦とさわやかな香りに包まれました。
そんな香りが漂う中から出てきたのは、園主の白木浩一さん。
「友達の家に作業している服のまま行くと、あんたえい香りやね〜と言われるよ」と笑いながら話す白木さん。
出荷場に居たおかあさんは「わたしは食べる前に車の中に入れておいて、香りを楽しんでから食べるんです」
それだけ、香りが立つ土佐文旦。
取材の日はあいにくの雨でしたが、晴れの日は出荷場はもちろんのこと、畑の周りも文旦の香りが漂っていて、深呼吸すると気持ちがいいとのこと。
そんなお話をききながら、土佐文旦の畑へ連れて行っていただきました。
地の利と自然の恵みを活かしてできる、良質な土佐文旦。
写真左:園主 白木浩一さん
まず果樹園の事務所のすぐ裏にある畑。こちらは昔田んぼだったところだったそう。
取材にお伺いしたのは12月の末近く、露地ものの文旦が収穫を待っており、どの樹にも文旦がたわわに実っていました。素人目で見る限りは立派な実ばかりでしたが、園主の白木さんは
「本当の文旦畑はもっと山の方にあるんだよ。行ってみましょうか。」
土佐市の宮ノ内地区は小さな山が点々とする合間に集落があります。
その小山の斜面にへばりつくかのように、植えられている文旦の樹たち。通称「ぶんたん山」
ぶんたん山の様子。中央を走るのはトロッコのレールです。
柑橘類の植物は、水はけがよく日当りの良い場所が栽培好適地とされています。
ぶんたん山は南向きの急斜面。台風がよく通る高知県にありながら、山が風から守ってくれ、雨と太陽の恵みをまんべんなく受けられる環境にあります。
そんな「地の利」を生かして育っているのが、白木果樹園さんの土佐文旦。
収穫直前の露地もの土佐文旦。雨と太陽の恵みを受けて、すくすくと育ちました。
収穫用のトロッコ。
先ほどの田んぼだった畑(水はけが良くない平地)でとれるものは、やはりぶんたん山のものより味が劣ってしまうとのこと。生育条件にも左右されるそうです。ただ、ぶんたん山の急斜面での収穫は一苦労。 いや〜トロッコがなければ収穫できないね、という白木さん。
味と香りを整える大事なステップ「追熟」
写真下部 「野囲い」用の枠と藁束
いい環境でいい文旦が育って…収穫後すぐ皆様の元へ届く、というわけではありません。収穫したては酸味が強く、実も固いため追熟させることが必要です。ここでは「野囲い」という手法を用います。地面にあけた堅穴に文旦を入れ、藁をかぶせて密封して1〜2ヶ月程度寝かせる。こうして、味のバランスが良い文旦が完成します。
また、追熟は味の話だけではなく、香りにも影響するという話があります。
文旦類の特徴である成分「ヌートカトン」収穫したての頃は含有量が少ないのですが、熟成させることにより、その量が増えるそうです。
文旦が持つ香りのポテンシャルを生かすためにも、この追熟はとても重要なのです。
皮もつやつや、ハウス育ちの温室土佐文旦。
熟成してきた文旦は、油胞から成分がにじみ出て、触るとしっとりしてくるのが特徴です。
文旦の実りを支える、人の手と小夏のちから。
実がなる前にさかのぼり、5月下旬頃。ぶんたん山の木々には白い花がたくさん咲き、受粉の時期を迎えます。これは文旦の出来を左右する大事な作業とのことです。
土佐文旦は、自家受粉(同種の花同士で受粉する)では質の良い実がつきにくいため、「小夏(こなつ)」の花粉を使用します。
小夏は別名・日向夏、ニューサマーオレンジとも呼ばれ、高知では広く親しまれている果物。食用の果実として出回る時期は5〜6月と土佐文旦とは違いますが、花の咲く時期は近く、文旦にとってなくてはならない相方みたいなもの。
ぶんたん山のところどころに、小夏の樹が植えられています。
花が咲いている時期は短く、タイミングを見計らって受粉をさせなければならないため、大人数の人の手を使って受粉作業をします。
人の手と小夏の力を借りることで、文旦の実りは成り立っています。
白木さんの飽くなき探究心と、たくさんの文旦のなかまたち。
文旦の仲間は、九州地方でも多く栽培されています。
文旦が日本に伝わった時代は、鉄砲伝来の時期と重なります。白木さんが語るに、文旦はとても日持ちがいいから、航海をしている人が船旅のビタミン補給として持ち込んだのでは…というロマンが広がるようなお話も聞かせていただきました。
(※日本に伝わったルートは諸説あります)
文旦のなかま、晩白柚(ばんぺいゆ)世界最大の柑橘類だそうです。
樹にぶらさがっていられるのが不思議なくらい、大きな実です。
白木さん「文旦は別の種類で受粉をするから、突然変異が起こりやすいんですよ。」
麻豆文旦、安政柑、平戸文旦、本田文旦…
そういって次々取り出されていた土佐文旦の親戚たち。国内で栽培されているだけでも、約40種類もの文旦があると言われています。
白木さんは趣味でこれらの樹を育てているとのことです。「文旦博物館です。」
文旦のなかまたち。
名もなき文旦のなかま。突然変異が多いため、人知れず生まれた新種も。
海外への視察も、仲間とよく行ったとのこと。中国の文旦生産現場や、フルーツの生産が盛んなアメリカ・カリフォルニアで車を借りて旅をするなど、研究熱心な白木さん。
海外の生産現場はどこも大規模でしたが、収穫するために樹木に無理な手の加え方をしていたり…
白木さん「大国の栽培規模を意識するより、日本では差別化をはかる作り方をしないとね。」
収量も大事ですが、やはり質のいい、美味しいものを作りたいという白木さん。
そんな熱意と飽くなき探究心が込められた土佐文旦は、高知の誇れる果物です。
白木さん、果樹園のみなさん、ありがとうございました!
今回の取材先データベース
白木果樹園
〒781-1124高知県土佐市宮ノ内435
文旦他果実の通信販売も行なっています。
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白木果樹園 公式サイト
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白木果樹園 Facebookページ
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高知県内で生産される土佐文旦果皮から抽出したエッセンシャルオイルです。爽やかな香りをお試しください。